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ドイツ視察ツアー報告レポート

ドイツ研修について(ゼロ・エネルギー社会)

セルフエナジーハウス研究会 会員
株式会社ソーラーハウス21家づくり 主任アドバイザー
江口 学

Writings&Photo:Manabu Eguchi

平成23年3月11日の地震で日本の原発神話は崩壊しました。昨年は原発の稼働率が実質ゼロになって、工場や一般家庭でも「節電」がキーワードになって、日本中が取り組んでいました。今回、2020年の脱原発を発表した再生可能エネルギーの国、ドイツでの研修に参加して、ゼロ・エネルギー住宅のヒントを得ようと無我夢中になって話を聞き、見学して来ました。

初日に断熱材工場を見学へしました。ドイツに着いた時は、大変暑く、Tシャツで過ごせるぐらいの天候でした。工場内を見学していると、涼しく感じる箇所がありました。工場は、熱を使っているのとエアコンなど入れていないのでさらに暑かったのですが、この涼しい所は断熱材を保管している場所でした。理由を聞くと、倉庫の天井には130mmの木の断熱材を充填しているだけだそうで、エアコンも無く、風が通る開口も無いのに、ただ木の断熱材を屋根裏に充填しているだけで、こんなに涼を感じられるのなら、日本の工場も夏場にエアコンをフル稼働させないでも十分に涼を感じられることが可能なのではと感じました。もう一つこの断熱材工場で感じた事は、工場にもかかわらず深呼吸するのにとても気持ちがいい事でした。

工場で深呼吸?と疑問に感じますが、普通の工場ですと深呼吸しようとは思いませんが、ここホーマテルム社は、材料が木のチップで、製造行程は完全な機械作業、それに工場内を清潔にしてある事だからと思います。説明や昼食の際に出してもらった飲料水も容器はすべて再生可能なビンでした。(日本では、ほぼ100%ペットボトルですが)ドイツでは飲料の多くが硝子ビンを使い、さらに冷やし方も日本のようにキンキンに冷やすのでは無く、ちょっと冷たい程度の温度になっています。こんな所にも、環境やリサイクルへの気配りが徹底していると驚きました。

どこのレストランも食事のテーブルには、ロウソクを灯してあります。ホテルの朝食バイキングでもテーブルにはロウソクが灯してあります。日没も夜の10時位ですので、夕食を取りながら夕日が見れます。日没の時間をさすがに日本に導入する事はできませんが、まるで工場のような光を灯して食事をしなくても、家族が集まる団欒には、少しの明かりの下で食事をする方がとても素敵だなと感じました。

毎朝、早く起きてホテルの周辺を散策しました。丁度工事中の新築現場があったので、そこにいた現場の人に頼み込んで中に入らせてもらいました。研究会のセミナーなどで事前に聞いてはいましたが、やはり日本では考えられないような仕様を実際に見ると驚く事が沢山ありました。まず断熱材がとても厚い事、外断熱の厚さが130mm屋根は250mm、どの様にしてこんなに厚い断熱材を施すのか実際に現場を見て大変勉強になりました。床暖房は、全ての居室から浴室まで床暖房が敷き詰められていました。

ドイツではホテル、空港、駅などではどこでも有料の無線インターネット接続は可能でしたが、日本のように成田空港から羽田に行く際の高速バス内でも利用できるほど便利である事が本当に必要なのかを考えさせられました。世界から見ると、日本はあまりにも便利すぎる、つまりエネルギーを使いすぎているという事です。

ドイツの工場の多くは太陽光を屋根に敷き詰めていました。断熱材の工場でも屋根に設置していましたので、太陽光で発電した電気を工場で使用していると尋ねましたが、電力会社に太陽光発電設置場所を提供しているだけで、自社では太陽光で発電した電気は使っていないとの事でした。移動途中に見られる牛舎や工場、倉庫の屋根にはびっしりと太陽光が設置してあります。日本の工場や畜舎にも太陽光を設置するような環境になれば良いと思います。

これからの日本の住宅は、ゼロ・エネルギー化が推進されていきます。化石燃料や原子力による第1次エネルギー消費を少なくし、再生可能エネルギーを活用することで未来に負担をかけない世界を実現させなければならない。それを、進めているドイツを見て私達も、もっと取り組まなければならないと感じました。

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