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ドイツ視察ツアー報告レポート

「proclima」(プロクリマ)社

Writings&Photo:Iko Oki

「とても良い事がありました、私はとても喜んでいます。」

この会報誌でも度々取り上げられている、調湿気蜜シート《インテロ》の日本での輸入・発売元エコトランスファー・ジャパンの代表 Mr.バウマンはバスの中で流暢な日本語でこう語り出した。

ドイツでは、様々な商品を公平な立場で比較して、最も優れた製品を公表するという。比較する商品は、メーカーから提供されるわけではなく、消費者が入手するのと同じ方法で扱う店から購入し、徹底的に検査して、どの製品が最も優れているかを公表するのだ。調査をしている事は、メーカーには知らされずいわば覆面調査である。この調査で最も優れていると評価される事は、メーカーにとって最大の賛美と言える。

《インテロ》は、ここで最も優れた性能を持った調湿気蜜シートとして評価を受けたと言うのだ。ドイツでは、第一次オイルショックの後、省エネ政策で建物の断熱性能を上げる事が決まり、断熱化が進んだ。しかし、当時はただ壁にガラス繊維の断熱材を放り込んだだけの対策で、数年後に壁内結露によるカビやダニの発生が社会問題になったと言う。その事から、断熱技術の研究が成され、長年の研究の成果として気密性を維持しながらも湿度を調整する事が出来るシートが開発されたのだ。

このような話を聞きながら、今回のツアーの最後の訪問先プロクリマのトレーニングセンターに着いた。


プレゼンルームでの説明を受けた後、早速トレーニングルームに案内された。小さな体育館のような建物の中に、大きな屋根のある建物が建てられている。屋根は同社の製品である防水調湿シートが張られ、その構造が一目でわかるようになっている。

その建物の内部は、壁から天井まで《インテロ》が貼られ、一角に大きな換気扇が設置されている。この部屋は気密室で、建物の断熱化で気密を保つ施工が如何に重要化がわかり、シートの貼り方やテーピングの方法をトレーニング出来るようになっている。

早速、ドアを閉めて換気扇を回して説明が始まった。数分後、部屋が減圧されてくるとシートが膨らんできた。一箇所をカッターで切ると、すごい勢いで空気が入ってくる。

レンガブロックの継ぎ目に煙を当ててみると隙間から同じく空気が入り込んでくる。確実な気密工事をしないとこのように、熱気や冷気が入り込んでくるという事が目の当たりにわかる。シートの重なりやテーピングの重要性、たとえ数ミリの破損でもそれが如何に重大な問題を引き起こすかなど《インテロ》を施工するときの要点がよくわかるようになっている。

調湿気密シートの販売量が着実に増加していると言われるドイツでも、まだまだ普及率は高くないが、最近では受講予約を取るのが大変な状態が続いているという。このトレーニングセンターの役割は、ますます重要な存在になっていくだろう。

理屈では理解しているはずの参加者たちも、この状態を見ると気密工事の重要性を再確認したようだ。日本でも断熱改修でエコポイントが付くなど断熱化の必要性を訴えているが、施工精度や気密の重要性、さらに湿度対策などには注意を払っていない。比較的湿度の低いドイツですら、結露の問題がおきたのだから、湿気の多い日本は特に注意を払う必要がある。

しかし、価格が高いからと日本では《インテロ》の普及がなかなか進んでいない。研究会もセミナーや勉強会で取り上げているが、より一層の普及活動が必要だと感じた訪問であった。

 

  1. レクチャーやトレーニングを行う気密室。
  2. バウマン氏が流暢な日本語で説明してくれる。
  3. この大きな換気扇で部屋の空気を排出すると、部屋は減圧される。
  4. 減圧されている部屋の一部に穴を開けると、ものすごい勢いで空気が入ってくる。
  5. ドイツでは一般的なレンガブロックの構造体だが、目地の間から風が入ってくる。このままだと、いくら厚い断熱材を使っても効果は半減する。
  6. 毎年発行される分厚い、テクニカルガイド。気密シートや防水シートに関するバイブルと言えるほど、詳細な内容が記載されている。
  7. 配線や配管周りの気密を上げるパッキング類も用途に応じて種類が揃っている。
  8. 挨拶をする、マネージャーのMr.Jesn氏と、バウマン氏。

 

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